アッチの街の片隅から愛を込めて

迸るほどの愛を込めて、濃厚かつ丁寧に音楽その他色々を語ります。

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夏こそ読書だ!2020 森博嗣「奥様はネットワーカ」

 

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読書のどこが好きなのかと言うと、あらゆるエンターテイメントの中でも文学は“能動的な姿勢を持って臨まなければならない”からである。

音楽、映画・ドラマといった映像作品、またはお笑いや演劇。それらは音と言葉と画(絵)という情報によって生み出されるものであり、人間が持つ感覚に直に訴えかけて入り込んでくるものである。情報の具体性がハッキリとしているのだ。

比べて活字となると、そこには文字の羅列しか用意されていないのである。読み手は自らで情報を汲み取り、咀嚼していかなければならない。

また“時間の支配の有無”が、文学とその他のエンターテイメントでの大きな違いである。音楽や映画は時間を支配する。始まれば、音や映像がその輝きを放ちながら終着点に向けてひた進むのである。反対に、活字は時間を支配しない。ページを捲りだす意思とその手がなければ、始まろうともしないのである。そんなある意味で無愛想な文学という芸術に、私は面白みを感じるのである。それを紐解く行為こそが読書である。結果として、読書は私に大きな充実感と恍惚を与えてくれるのである。

 

 

読書って本当に素晴らしいものですねぇ~!

(滲み出る無理矢理感)

 

 

 

 

今回ご紹介する一冊は、森博嗣奥様はネットワーカである。

 

奥様はネットワーカ (ダ・ヴィンチブックス)

 

森博嗣も日本を代表する作家の一人である。著書のすべてがFになるは日本ミステリー界の名作としてよく話題となり、ドラマ化にアニメ化といったメディアミックスもされている。

 

言うてそんなに森博嗣作品は読み漁ってないのである。

工学博士でもある森博嗣の文体は非常に独特で、私は「読んでいると自分の頭が良くなっている気にさせる作家」と勝手に捉えている。脳を捏ね繰り回されるような比喩表現と叙述トリック、そして聞き馴染みのない理系的専門用語の数々が待ち受けているので、慣れがないと難しいというか嫌になってしまうのである。笑 気合いを入れる必要がありますよ、と。逆を言えば、インテリジェンス満載で小難しい内容が好きな人は大好きだろうし、それがもたらす充実感は半端がないのだろうと思う。時間と気持ちの余裕がたっぷりある時に読み進めたい作家である。

 

とは言え、この「奥様はネットワーカ」はめちゃくちゃ読み易いのである。これもまた私が高校生の時に、学校の図書室で発見して、タイトルと表紙に惹かれ読み始めたのが出会いである。

 

舞台は大学の工学部。教授や秘書等、6名の登場人物がそれぞれの視点で一つの事件を追っていくミステリーである。

一般的な小説と異なるのは、構造上各登場人物の視点が次々と切り替わりながら、小間切りでストーリーを読み進める形となってので、長い文章をひたすらに読むのが苦手な方でもイケるのである。読み易い。

 

そしてもう一点、イラストレーター・コジマケン氏の素敵なイラストとのコラボレーションが大きなポイントなのである。カラフルでポップで、しかしどこか不思議さを感じさせるタッチが、森博嗣が作り出す物語の奇妙な雰囲気と抜群にマッチしている。細かい線の描き込みで成り立つ絵、非常に好きだ。最高のコラボなのだと感じる。

 

そして読み進めていくと、途中しっかりと叙述トリックが効いていて、思わず“あれ?”ということになるのだ。これが楽しいのだ。しっかりと騙されてください。

 

 

活字とイラストのダブルの刺激で楽しめる、独特な一冊。是非とも!

ではまた!