かねてより「自分は睡眠中に物凄くイビキを掻いているのではないのか説」が囁かれているのである。特にここ数年その説の真実味が増してきている。とは言え、自分は一人暮らしをしているので、たとえ実際にイビキを掻き散らかして寝ていたとしても、それを誰かが見聞きすることはなく、教えてもらうこともできない。しかし何故だか体感的に“嗚呼、イビキを掻いていたんだろうなァ”と思ってしまうのである。
と言うのは、つい数日前に日頃の疲労の蓄積のせいか、11時間も睡眠を取ってしまったのである。流石に寝過ぎたと思ったが、“まあ仕方無えよな”とその時ばかりは自分に甘くしてあげることにしたのだ。しかし、どうも睡眠の充実感が低い。寝ている合間の呼吸が覚束なかった記憶がある。呼吸のヌケ感が悪い。寝苦しさが合いまった感じがしていたのだ。実際そんなことがこれまでにもあったわけだが、今回の一件がより先述の説を決定的に立証させるものなのではないかと感じたのだ。
職場の同僚に自らの「イビキ説」について話し、“いっそ寝ている間の自分を動画撮影してみたいのよね”なんて言っていたら、その同僚がこんなことを教えてくれたのである。
「今はイビキを録音してくれるアプリがあるんですよ」と。
ほぅ。非常に耳寄りな情報である。良いことを知った。便利な時代だ。早速該当のアプリをスマートフォンにインストールしたのである。
早速その日の晩、アプリの効果を試すことにした。アプリを起動状態にしたまま就寝する。そしてもし睡眠中にイビキを掻いたのであれば、その音を自動的に録音してくれるということだ。
イビキに関しては、本当に疲れてしまった時にしか掻かないものだと思っている。これもあくまで体感的な判断であるが、毎日毎日イビキなんて掻いていられないのである。仮にそうであれば流石に危ないぞ、と。真剣に何かしらの対策を講じなければならない。その日はそこまで疲れていなかった。故に何も録音されず朝を迎えることを願った。
翌朝、目を覚ますとともにすぐさまアプリを確認する。するとどうだ、早朝の時間にログが残っている。規則的に配列された波形がそこにはあった。音は波形で表される。
やってしまったか。マジですか、と。中々にショックを受けたのである。
そして問題はそのイビキの音色である。ガーガー五月蠅くイビキを掻いていたのであれば、たまったもんじゃない。
恐る恐る録音された波形を再生する。
バゥッ!バゥッ!バゥッ!バゥッ!
外の犬の鳴き声であった。
検証は続く!ではまた!