人の忠告を素直に聞いておけば良かったと思う時がある。特にその人が何かの物事について専門的な人であればあるほど、そうだ。恐らくその人の“経験則”的なものが自信であり、忠告そのものの重みを増させるものなのであろう。
普通自動車免許を所有している私ではあるが、現在のところ車の必要性を感じる生活を送っているわけではないので、自転車をメインの移動手段としている。かれこれ自転車とは長い付き合いである。特別感すらある。
しかし、そのくせ自転車運というものがない。中学生の頃はしょっちゅう自転車の鍵を無くしてしまい、その都度学校の先生にも一緒に探してもらい、御手数御心配をよくおかけしたものだ。
そしてよくパンクする。これが深刻だ。年2ペースくらいではパンクしている。毎度だがお金がかかって仕方ない。恐らく乗り方の問題もあり、なんでもタイヤ内の空気は常に満ちている状態であることが重要なのだと。本来であれば度々気にかけて空気を入れておかなければならないのだが、私はついついそれを怠ってしまい、結果ちょっとした油断と怠惰が余計なパンクを招いてしまっていると言っても過言ではないのかもしれない。
そしてとある日また自転車のタイヤはパンクしたのだ。またか、と。タイヤの空気とともに、私の気持ちもフニャアと抜けてしまったのである。
近所に2箇所、行きつけの自転車屋さんがある。最近は家からすぐ近くの方に訪れていたが、気分を変えたくなりもう一つの店に行くことにした。
そこは自分が高校生の頃くらいから通っている。おじいさん店主が安定の腕前を愛嬌を見せながら店を切り盛りしている。“信頼と実績”とは彼のために存在する言葉だ。
しかし、そんな彼が一点だけ私にとって困るポイントがある。こちらとしてはパンクを直してほしいだけなのに、毎度チューブ及びタイヤ交換を促されるところだ。その都度反応に困るのだ。実際過去に交換をしてもらったこともあるが、今はまだその時期では無いだろうという私の読みである。
そして今回もまるでお決まりのように同様の台詞が彼から飛び出した。が、とりあえずパンクを直してほしい、乗れれば良いというこの時の考えの私だ。「(パンクを)直しても、すぐタイヤがイカれちまうよ」と彼は仰っていたが、お金も勿体ないのでパンクのみ直していただいた。何度も言うが、腕は確かだ。見る見るうちに修理は進み、復活。そして我が自転車は再びその息を吹き返し、あの素敵な軽快な走り心地をまた感じさせてくれるのである。
数日前のことである。食料品や生活用品の買い物へと、近所を自転車漕いで移動していた。昨今のコロナウイルスの影響もあり、買い物くらいでしか休日は外に出ないのでちょっとした気分転換でもあるこの時間。春風を感じながら軽快に自転車を飛ばしていたのである。
家からはやや離れた、目的のスーパーが見えてきたあたりでのことだ。
急に「パァーーン!!」と、まるで抜けの良いスネアドラムのような渇いた音が響き渡ったのである。私は驚き、自転車を止め周囲を見回した。
するとどうだ、自転車の後輪が完全にパンクしていたのである。運転時における破裂パンクは人生初である。やってしまった、と。しかもよくあるいつものパンクではない。自転車を無理にでも手で押すと、後輪のタイヤとチューブがホイールからフニャフニャと外れ、車体自体に絡まってしまったのである。そして後輪は動かなくなった。完全にやらかしたパターンである。自転車を動かすには荷台を持ち上げて、前輪のみで前進するしかない。マジでダルいやつである。
なんとかスーパーまで辿り着き、駐輪場に自転車を停める。さて、どうするものかと。
しかし、ここで意外にも冷静であった自分が居たのだ。と言うのも、私は1年程前に自転車保険の加入を済ませていたのである。その保険サービスの一環で「自転車ロードサービス」たるものが存在していることを頭の片隅に入れていたのだ。つまり、壊れてしまった自転車を自分の代わりに運んでくれる、というものだ。
日々安全運転を心掛けている故に、この日まで自転車保険は“お守り”としての効力でしか無かったが、幸か不幸か、遂にその実力を発揮する時が来たのだ。
早速専用のアプリを介し、ロードサービスの出動要請をする。程なくしてサービスセンターの方から直接連絡を頂き、事情を説明する。特に問題もなく、要請完了。40分程で来ていただけるとのことであった。もう、一安心である。有難すぎる。
しかし、こちらまでの到着までの時間が中々長いので困ったものである。陽はやがて段々と落ちてきて、気温は下がっていく。春風も強く吹き付け、非常に寒いのである。近くに図書館があるので、本来であればそこで時間を潰すものの、現在は当然休館中である。暖を取るため、仕方なくスーパーの中をひたすらにウロウロしている他無かったのだ。完全無欠の怪しいヤツである。
もう爆裂的に煙草が吸いたくなりましたよ。笑 何なんだ一体、と。「パァーーン!!」じゃねえよ、と。笑 しかし我慢しましたけどね。
要請から約40分後、表に出て到着を待っていると、それっぽい軽トラックと、またそれっぽいバンが駐車場へ入り込んでくるのが見えた。「おぉ、救世主の登場じゃ」と、つい安堵の息を漏らす。しかしそのどちらでもなく、別の方向からオレンジ色の作業着を身に纏った愛想と体格の良い男性が私の方へと歩いてきたのである。あれま。ともあれ、現場到着である。作業員の方は後輪が萎れ切った私の自転車を確認し、そして「自宅までで良いですか?」と私に自転車の運搬場所を確認した後、ドナドナ自転車を運んでいったのである。込みこみで1時間程膠着状態の私であったが、こんなにも助かることはない。お礼、感謝。
ついでに、防犯上の観点から私自身は運搬車に同乗できないのである。笑 なので一人歩いて帰りましたとさ。
いやー、参ってしまいましたよ。最初からあの自転車屋さんのおじいさんの忠告を聞いていれば、こんな急なアクシデントは起きずに済んだのかもしれないですね…。
非常にダルかったです。ただ、一番ダルいのは「これもブログのネタになるぞ!」と思ってしまった自分であることは間違いないのである。
皆さんもくれぐれも自転車にはご注意を!ではまた!